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2018/01/03

クリプトスポリジウムについての基礎知識

クリプトスポリジウムについての基礎知識

目次


  • クリプトスポリジウムとは?
  • 症状
  • 日本での集団感染事例
  • 対策・指針について
    • 施設基準省令の改正について
    • クリプトスポリジウム等対策指針について
  • 水道水中のクリプトスポリジウム等対策の実施について
    • 水道原水に係るクリプトスポリジウム等による汚染のおそれの判断
    • リスクレベルの判断
    • 予防対策

クリプトスポリジウムとは?

クリプトスポリジウムとは病原性を有する原生生物で、牛、豚、人、ヘビ等、様々な生物を宿主とし、経口摂取により感染します。薬剤耐性が強く、通常の塩素消毒では死滅・不活化ができません。

症状

下痢(主に水様性下痢)、腹痛、倦怠感、食欲低下など軽度の発熱を伴います。潜伏期間は3~10日で、大多数は9日以内に発症します。下痢は1日数回程度から20回以上と激しいケースもあり、数日から2~3週間持続し、自然治癒します。しかし免疫不全患者が感染すると重症化する場合があり、死亡例もあるため注意が必要です。

日本での集団感染事例

1994年 神奈川県平塚市にて461人が感染

1996年 埼玉県木越生市にて8,812人が感染

対策・指針について

日本での集団感染事例や海外での事例、WHOのガイドラインを受けて平成8年に暫定対策指針が策定されました。
しかし、必要な濾過設備が設置されていない施設が多くあること、また紫外線照射がクリプトスポリジウムの不活化に有効であることが認知されたため、水道施設の技術的基準を定める省令が改正され、水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針が取りまとめられました。

施設基準省令の改正について

  1. 水道施設の技術的基準を定める省令の一部を改正する省令【令和元年厚生労働省令第6号】

  2. 水道施設の技術的基準を定める省令の一部を改正する省令について【生食発0529第1号】

クリプトスポリジウム等対策指針について

  1. 水道水中のクリプトスポリジウム等対策の実施についての一部改正について【薬生水発0529第1号】

  2. 水道における指標菌及びクリプトスポリジウム等の検査方法について【健水発第0330006号通知(一部改正 令和5年3月31日薬生水発0331第12号)】

クリプトスポリジウムについて、その検出方法や不活化方法の研究が進んだため、これらの知見を取り入れた新しい指針が作られました。具体的には、水道における指標菌及びクリプトスポリジウム等の検査方法が示され、クリプトスポリジウムのクロスチェックについても実施要領が示されました。クロスチェックとはクリプトスポリジウムの検査精度を確保するため、検査を行った機関とは別の第三者がクリプトスポリジウム等の検査結果について、顕微鏡写真や遺伝子検査によって確認することを指します。



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弊社でクリプトスポリジウム検査に使う顕微鏡


クリプトスポリジウム対策がどのように実施されるかを下で説明します。

水道水中のクリプトスポリジウム等対策の実施について

※「水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針」より抜粋

水道原水に係るクリプトスポリジウム等による汚染のおそれの判断

(1)レベル4


クリプトスポリジウム等による汚染のおそれが高い)地表水を水道の原水としており、当該原水から指標菌が検出されたことがある施設


(2)レベル3


クリプトスポリジウム等による汚染のおそれがある)地表水以外の水を水道の原水としており、当該原水から指標菌が検出されたことがある施設


(3)レベル2


当面、クリプトスポリジウム等による汚染の可能性が低い)地表水等が混入していない被圧地下水以外の水を原水としており、当該原水から指標菌が検出されたことがない施設


(4)レベル1


クリプトスポリジウム等による汚染の可能性が低い)地表水等が混入していない被圧地下水のみを原水としており、当該原水から指標菌が検出されたことがない施設

リスクレベルの判断

(1)レベル4


クリプトスポリジウム等については、し尿、下水、家畜の糞尿等を処理する施設から排出される汚水の他、イノシシ、シカ、サル等の野生生物の糞便も汚染源となることから、地表水である原水から指標菌が検出されている場合は、クリプトスポリジウム等による汚染のおそれが高いと判断される。


(2)レベル3


レベル4に該当しない、伏流水、浅井戸等を水源とする施設であっても、原水から指標菌が検出されたことがある場合、当該原水は糞便により汚染されていると考えられることから、クリプトスポリジウム等による汚染のおそれがあると判断される。


(3)レベル2


原水から指標菌が検出されていない場合は、当該原水は糞便により汚染されていないと考えられることから、当面、クリプトスポリジウム等による汚染の可能性は低いと判断される。


(4)レベル1


井戸のケーシング等が破損していないこと、ストレーナーが被圧地下水のみを取水できる位置にあること等が確認され、かつ、原水の水質検査結果から地表水が混入していないことが確認できる井戸(例えば、大腸菌、トリクロロエチレン等が検出されていないこと等)から取水した被圧地下水を原水とし、当該原水から指標菌が検出されたことがない場合には、クリプトスポリジウム等による汚染の可能性は低いと判断される。

予防対策

(1)施設整備


(ア)レベル4

ろ過池またはろ過膜(以下、「ろ過池等」という。)の出口の濁度を0.1度以下に維持することが可能なろ過設備(急速ろ過、緩速ろ過、膜ろ過等)を整備すること。


(イ)レベル3


以下のいずれかの施設を整備すること。


a.ろ過池等の出口の濁度を0.1度以下に維持することが可能なろ過設備(急速ろ過、緩速ろ過、膜ろ過等)。

b.クリプトスポリジウム等を不活化することができる紫外線処理設備。具体的には以下の要件を満たすもの。


① 紫外線照射槽を通過する水量の95%以上に対して、紫外線(253.7nm付近)の照射量を常時10mJ/cm2以上確保できること。


② 処理対象とする水が以下の水質を満たすものであること。 ・濁度 2度以下であること ・色度 5度以下であること ・紫外線(253.7nm付近)の透過率が75%を超えること(紫外線吸光度が0.125 abs./10mm未満であること)


③ 十分に紫外線が照射されていることを常時確認可能な紫外線強度計を備えていること。


④ 原水の濁度の常時測定が可能な濁度計を備えていること(過去の水質検査結果等から水道の原水の濁度が2度に達しないことが明らかである場合を除く)。


(2)原水等の検査


(ア)レベル4及びレベル3


水質検査計画等に基づき、適切な頻度で原水のクリプトスポリジウム等及び指標菌の検査を実施すること。ただし、クリプトスポリジウム等の除去又は不活化のために必要な施設を整備中の期間においては、原水のクリプトスポリジウム等を3ヶ月に1回以上、指標菌を月1回以上検査すること。


(イ)レベル2


3ヶ月に1回以上、原水の指標菌の検査を実施すること。


(ウ)レベル1


年1回、原水の水質検査を行い、大腸菌、トリクロロエチレン等の地表からの汚染の可能性を示す項目の検査結果から被圧地下水以外の水の混入の有無を確認すること。

3年に1回、井戸内部の撮影等により、ケーシング及びストレーナーの状況、堆積物の状況等の点検を行うこと。


参考資料


  • 厚生労働省ホームページ 新しいクリプトスポリジウム等対策について
  • 愛知県衛生研究所ホームページ クリプトスポリジウムによる集団感染
  • 国立感染症研究所 感染症情報センターホームページ IASR Vol.26.p167-168

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